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生体組織の構築と破綻を制御する分子機構の数理モデル解析

研究分担者
石渡 通徳
大阪大学大学院基礎工学研究科・システム創成専攻 教授
http://www.sigmath.es.osaka-u.ac.jp/grad_math/

研究概要

空間的に分布した多成分の物質について、拡散と反応が共存する場合には、時間が経つとともに様々な興味深い濃度パターンが生じることが実験的に知られている(BZ反応など)。こうした系を記述する基本量は各物質の「濃度」であるが、濃度は空間的な分布をもち、さらに時間変化をこうむるので、時間・空間変数に依存した未知関数として数理的に定式化される。拡散現象は濃度を表す未知関数に対する線型偏微分方程式(拡散方程式)で記述される一方、反応現象は最もシンプルな場合には冪型の非線型項を持つ常微分方程式として定式化されるため、反応と拡散を含む系の数理モデルは、これらの双方をもつ非線型放物型方程式となる。以上は「拡散・反応」というある種「化学」的な言葉遣いによるモデルの説明であるが、数理モデルとして得られた半線型放物型方程式は化学反応のみに限るものではなく、「針金ループを石鹸液に漬けたとき、これを淵とする石鹸膜がどのようにできるか」といった一見化学反応とは全く関係ないような現象から「相互作用を持つ量子化された場の満たすモデル」といったそもそも日常レベルの現象とはかけ離れた素粒子現象まで、きわめて広い範囲の現象に対する数理モデルになっている。分担者はこうした(古典場の)方程式の数理解析を行ってきた。
生体内においても様々な拡散・反応現象が生じている。本研究では生体内の細胞コミュニティの動態予測・制御を目指して、細胞コミュニティのマルチスケール数理モデルを構築し、それを駆動する数理的原理がどこにあるかを抽出することを試みる。例えば癌細胞コミュニティの空間的・時間的発展に関する数理解析は具体的目標の一つであるが、本研究のターゲットは個々のモデルの解析と同時にメタなものでもある。細胞コミュニティ動態の重要な特徴として、時間スケールと空間スケールが大きく異なる複数のコンポーネントが相互作用をもち系全体の時間的・空間的発展を生成することが挙げられる。こうした系の数理モデルは、差分・常微分・偏微分、整数階・非整数階微分、連続・離散といった、これまでのモデルでは同時に扱われてこなかった異質な(数理的)要素がカップリングしたものとなっており、こうした系の時間発展を解析する数理的枠組みの一般論の構築はほとんど手付かずである。特にツールとしての理論的解析手法(視点の設定の仕方、基本的な数理的事実の整備など)がいまだ未発達であるため、これまでの解析では個々の系の特殊な構造を最大限に生かした解析がなされざるを得なかった。本研究では、実験との協働に基づく数理モデルの構築とその解析を通じ、いまだ整備未発達なマルチスケールモデル解析に対する一般的な数理的枠組みの構築を試みることにより、細胞コミュニティ動態予測・制御に対する理論的ツールを開発することを狙う。

参考文献

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