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細胞間相互作用の数理科学的なモデル構築と理論化

研究代表者
川崎秀二
岩手大学・理工学部・物理材料理工学科
http://www.se.iwate-u.ac.jp/teacher/kawasaki-shuji

研究概要

【これまでの研究概要】確率モデルとその解析に関する研究.

非古典的な時系列モデルである長期記憶過程や自己相似過程という確率過程について,それらのウェーブレット解析の理論的定式化およびそれらの関わる現象のモデル化の研究を行ってきました.非古典的というのは,非定常過程であり非Gauss過程である事,共分散和が発散する事,一般に非Markov過程である事など,幾つかの難しさがあります.また,複雑系と呼ばれる物理系の確率論的モデルとして用いられます.ウェーブレット解析については,ウェーブレット係数の(シフト,スケール)の変数のうち,従来はシフトに関する共分散減衰性の評価のみが得られており,しかもこれは漸近評価でした.これを,まず正定値関数の理論を応用してシフト変数に関する各点評価を厳密に与えました.次いで,それを応用する形でスケール変数に関する評価を,これも各点評価で厳密に与えました.シフト変数に関する評価はフーリエ解析が適用し易いのですが,スケール変数に関する評価は,全くと言っていいほどアプローチの仕方が知られていませんでした.また,漸近評価で減衰の指数は十分な減衰速さを示唆するものでしたが,各点評価で減衰が「実際に」速い事を示した結果,共分散和がほぼ分散和に等しいという時間-周波数局在性を与える事ができ,元の過程ドメインでの強従属性がウェーブレットドメインではほぼ無相関へ転換される事を定式化しました. この研究成果はドイツBonn大学応用数学研究所Sergio Albeverio教授(確率解析分野の世界的な大家)との共著論文として上梓されました.
現職に就いてからは,科研費プロジェクトおよびCRESTプロジェクトにおいて数理医学研究や生物モデリング研究に出会い,これらに携わらせていただく機会に恵まれました.未知の現象を扱う事,そもそも分子細胞生物学は難解である事,生物学者/生物医学者とのディスカッションは大変な事(笑),など日々悩んで奮闘中ですが,その印象は....大変だけど遣り甲斐があります.「挑戦」が常にあると感じています.

【研究計画】細胞間相互作用の数理科学的なモデル化と理論化

臓器や組織,そして腫瘍の形成・維持における細胞社会の多種多様な相互作用と協調. その複雑な制御機構の解明に向けて,数理科学的なモデリング/解析に取り組みます. 他班から発現遺伝子プロファイル等,様々な生物医学的データを提供いただき,それにデータ解析を施しながら少しずつ理論的モデリング知見を積み重ねていきます. ここではまず如何にして,生物医学データを数学の俎上に乗せるか(如何に定量化・ロジック化するか)が重要であり,基本的に生物医学者との密な連携が必要になると考えています. そうして,モデリング本論で幾度もの修正を経て悩んだ後ある程度知見が蓄積されたら,シミュレーションにより,未知の分子や経路を予測し生物医学者へフィードバックできるようにしたいと願っています.
対象となる複数系統の分子経路ネットワークの相互作用系を抽出し,その通常状態(ロバスト性の範囲内の通常の揺らぎ)をまず定式化し,徐々に高負荷状態や異常状態のモデリングへ接続していきます. また,そこで記述されたネットワークに,細胞の分化や進化のスイッチング制御がどう絡んでくるのか,がキーとなります. これらを確率論的なアプローチでモデル化していきます. 確率論的アプローチは,微分方程式論的アプローチとの相性が良く,また相互補完できる手法となると考えています.

参考文献

  1. *Kawasaki S, Minerva D, Itano H, Suzuki T. Finding solvable units of variables in nonlinear ODEs of ECM degradation pathway network.
    Comp. Math. Method. Medicine, Article ID 5924270, 2017.  
  2. Albeverio S, *Kawasaki S. On the localization property of wavelet coefficients for processes with stationary-increments, and applications II: Localization with respect to scale.
    Osaka J. Math., 51: 1-39, 2014.
  3. *Ito K, Takahashi H, Umekawa Y, Imamura T, Kawasaki S, Ogata T, Kakizaki Y, Seymour R.Metabolic profiling reveals tissue- and temperature- specific metabolomics responses in thermoregulatory male florets of Dracunculus vulgaris (Araceae),
    Metabolomics, 9: 919-930, 2013.
  4. *Higuchi M, Kawasaki S, Gamba J, Koike A, Murakami H.A fundamental conception to formulate image data hiding scheme based on error diffusion from stochastic viewpoint.
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  5. *Odaka Y, Inn Y, Kitazume M, Higuchi M, Kawasaki S, Murakami H.An intrinsic characteristic in the multiple use of mobile phone terminals with GPS and its application to the positioning error reduction.
    Int. J. Circuit. System. Signal Process., 5: 176-183, 2011.
  6. *Higuchi M, Emori A, Kawasaki S, Gamba J, Koike A, Murakami H.Image encryption methods using intensity transformations in visual cryptography.
    Int. J. Math. Comp. Simulation, 5: 61-68, 2011.
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  8. *Kawasaki S, Higuchi M, Murakami H.On modeling ubiquitous cloud: Estimation of traffic.
    WSEAS Trans. Math.,8: 530-540, 2009.
  9. Albeverio S, *Kawasaki S.On a localization property in Wavelet coefficient for the processes with stationary-increments and applications. I. Localization with respect to shift.
    Adv. Appl. Prob., 37: 938-962, 2005.
  10. *Kawasaki S, Morita H.On optimal scale upper bound for Wavelet-based estimation for hurst index of fractional brownian motion.
    J. Interdiscip. Math., 8: 195-214, 2005.

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