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ショウジョウバエを用いた細胞ダイバーシティーの個体レベルでの解析と検証

研究代表者 
中嶋 悠一朗
東北大学・学際科学フロンティア研究所
http://www.fris.tohoku.ac.jp/researcher/creative/nakajima.html

研究概要

生体中の臓器や組織という細胞社会において、幹細胞を中心とした様々な細胞からなる「細胞ダイバーシティー」が形成される。しかしながら、細胞ダイバーシティーの重要性は組織の形成や恒常性維持において示唆されているものの、その分子レベルの実体や生理的な役割は未だ研究途上である。
ショウジョウバエ成体の中腸は、ほ乳類の小腸に相当した臓器であり、幹細胞をはじめとした4タイプの細胞で構成され、中腸上皮は幹細胞の細胞分裂や分化のバランスで組織恒常性が維持される。一方、栄養状態の変化や病態、老化においては幹細胞の増加や細胞の運命変化が起こり、組織サイズの変化やリモデリング、組織構造の崩壊といった組織レベルの応答を示す。しかしながら、幹細胞を中心とした細胞間相互作用や個々の細胞の振る舞いがどのように協調あるいは破綻することで組織レベルの生理的な変化につながるのか、その仕組みはほとんど明らかでない。
本研究では、ショウジョウバエ中腸上皮を生体モデルとして、幹細胞を起点とした細胞ダイバーシティーを維持する仕組みを理解し、その生理的な役割の解明を目指す(図)。これまでに私は、生体上皮の組織恒常性を維持する仕組みの解明に取り組んでおり、組織成長やターンオーバーに必須の細胞分裂や細胞死に注目した研究を展開してきた。その過程で、上皮と平行な細胞分裂方向の異常が、上皮から間葉様の細胞への運命転換(上皮間葉転換)の誘導につながることを見出した。細胞の分裂様式や上皮間葉転換は中腸の幹細胞の分裂や分化の過程にも関与することが示唆されることから、これらが中腸における細胞ダイバーシティー維持に果たす役割を明らかにする。また、組織レベルの応答の基本原理を理解するには、各細胞の振る舞いや遺伝子発現動態を実験で解析する還元的アプローチに加え、細胞間相互作用や細胞の振る舞いをネットワークとして捉える統合的なアプローチが有効である。そこで、本研究および領域内で構築される数理モデルから予測されたキーとなる分子経路を、実際に実験操作することでモデルの検証を行う。本研究では、実験と理論の複合的なアプローチによって細胞ダイバーシティー維持の普遍原理を明らかにすることを目指しており、その成果は細胞ダイバーシティーの破綻や異常に起因する様々な病態の理解につながることが期待される。

参考文献

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