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哺乳動物消化管組織における細胞社会ダイバーシティー

研究代表者
八尾 良司
(公財)がん研究会・がん研究所細胞生物部
http://www.jfcr.or.jp/laboratory/department/cell_biology/index.html

研究概要

哺乳動物の組織では、自己複製能をもつ幹細胞から分化細胞が生じ、秩序のとれた細胞社会ダイバーシティーが形成されている。生体内外の攻撃(物理的ストレス、薬物、放射線など)に晒されている組織が秩序を維持するためには、細胞自律的な応答、細胞間の直接・間接的な相互作用、微小環境など多様な防御機構が存在し、組織に強靱性(ロバストネス)を与えている。しかし、一旦秩序が乱れ、疾病を生じてしまうと、このような防御機構は、治療抵抗性の要因ともなる。細胞社会ダイバーシティーを十分に理解する事は、生体組織の恒常性維持のみならず、その変化により生じる疾病の発症メカニズム、さらに治療戦略を考える上で、重要である。
哺乳動物の組織レベル解析では、遺伝子改変マウスが重要な役割を果たしてきた。消化管の研究領域では、がん抑制遺伝子Apcの不活化変異が発がん過程の初期に生じ、Wntシグナルを亢進させることにより幹細胞の異常増殖を引き起こす事が明らかにされている。最近では、消化管組織の3次元オルガノイド培養法が確立され、in vitroで生体組織の細胞多様性や階層性を解析することが可能になっている。我々は、Apcコンディショナルノックアウトマウスの正常消化管から3次元培養オルガノイドを樹立し、in vitroでがん抑制遺伝子やがん遺伝子に変異を導入する実験系を作成し、発がん過程の解析と治療標的分子の実証を行なってきた。遺伝子改変マウスと3次元培養オルガノイドは、多様な細胞から構成される生体組織の恒常性維持機構やその破綻による変化を解析するのに優れたモデルである。
本研究課題では、生体組織の恒常性制御の鍵となる新たなパスウェイや分子、さらにその数理モデルについて、哺乳動物の消化管をモデル組織として実証実験を行なう。申請者が樹立している様々な遺伝子改変マウスや3次元培養オルガノイドを用いて、ゲノム編集による遺伝学的アプローチや低分子化合物等を用いた阻害実験等を行ない、細胞社会ダイバーシティーの統合的な理解という学術的に重要な課題に取り組むとともに、がんをはじめとする疾病の治療戦略の開発など、臨床応用を目指した研究を展開する。

参考文献

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  3. Toki H, Inoue M, Minowa O, Motegi H, Saiki Y, Wakana S, Masuya H, Gondo Y, Shiroishi T, Yao R, Noda T. Novel retinoblastoma mutation abrogating the interaction to E2F2/3, but not E2F1, led to selective suppression of thyroid tumors.
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  4. Toki H, Inoue M, Motegi H, Minowa O, Kanda H, Yamamoto N, Ikeda A, Karashima Y, Matsui J, Kaneda H, Miura I, Suzuki T, Wakana S, Masuya H, Gondo Y, Shiroishi T, Akiyama T, Yao R, Noda T. Novel mouse model for Gardner syndrome generated by a large-scale N-ethyl-N-nitrosourea mutagenesis program.
    Cancer Sci.,104(7): 937-944, 2013.
  5. *Yao, R., Natsume, Y., Saiki, Y., Shioya, H., Takeuchi, K., Yamori, T., Toki, H., Aoki, I., Saga, T., Noda, T. Disruption of Tacc3 function leads to in vivo tumor regression.
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